
クラレンス・クレモンズが亡くなったそうだ。
スプリングスティーンは俺の十代の日々に良く聞いた。
だから、クラレンスも良く聞いたってことになる。
突き抜けるように伸びるサックスの音色、最高にご機嫌だ。
名作「ボーン・トゥ・ラン」の最後を飾る「ジャングルランド」、
中盤のあのロングトーンは、
ロック史上に残るサックスの名演と誰もが言うだろう。
しかし、ベーシストに転向した20代の俺、
楽器を弾く事に夢中になるにつれ、技術的に面白い音楽を多く聴くようになった。
スプリングスティーンのような、アメリカの大らかな音楽よりも、
ジャズ的なアプローチ、つまりは早く正確に楽器を弾く音楽を好んで聴くようになった。
早く・正確に。早く・正確に。。
そんな中、音楽学校でサックスの講師をしてる友人の先輩がこんなことを言ってたってのを聞いた。
「スプリングスティーンのとこの、クラレンス・クレモンズってやつさ、『コルトレーンって何だっぺー?食えんのかー?』ってサックス吹くんだよな。最高なんだよな。」
ジョン・コルトレーンと言えば、マイルス・デイビスに見いだされたサックス奏者。
革新的な音使いとテクニックは、ジャズメンを志すサックス奏者であれば誰でも目標にする。
それに対して、クラレンスの音使いってのはペンタトニックが主体だし、音符に書いた物を吹かせれば、初心者であっても簡単に吹く事が出来るだろう。
しかし、クラレンスと全く同じように出来るかといったら、それはとんでもない。
あの、音色と存在感は唯一無二。音を聴けばすぐにクラレンスと分かる。
逆に、あの音色を出そうと思えば、コルトレーンよりも難しいのかもしれない。
ジョン・コルトレーンとクラレンス・クレモンズ、どちらがが優れているという訳ではない。どちらも素晴らしいのだ。
ギタリストであれば、スティーヴ・ヴァイとBBキング、
ベーシストであれば、ジャコ・パストリアスとリック・ダンコ、
ドラマーであれば、スティーブ・ガッドとリンゴ・スター。
どちらも素晴らしい。
音楽/芸術ということは、そう単純なものではない。
技術というものは、自分の中にある音を表現するための手段にすぎない。
いくら技術があっても、自分の中に何もなければダメだし、
表現したい衝動だけで音を出しても、そう上手くいくものじゃない。
「コルトレーンってなんだっぺ〜〜?」
そんなことをユーモアたっぷりに巧く言い当ててる先輩のジョーク。
クラレンス・クレモンズを聞くといつも思い出す。
それを引き合いに出して、馬鹿笑いしながら、音楽の素晴らしさを語った日々。
久しぶりにスプリングスティーンを聞きながら思い出した。
クラレンス・クレモンズ Rest In Peace…
そう、この「だれだっぺ〜〜?」の話は、yutoに聞いて大笑いしたんだよな。
なんとなくそう思ってたことを、一言で言い表してて「これだ!」と思ったもんだよ。
C.クレモンズ聴くといつもこの話を思い出してた。
しかし、最近、先輩ミュージシャンがどんどん居なくなって寂しいよな。
殺しても死なない印象だったのに…。
初めてサックスって楽器の音の魅力を叩きつけてくれたプレイヤーでした。
いや、確かにビッグマンっちゅーくらいで、
頼りがいのある風貌でしたもんね。
俺も、サックスかっこいい!と思ったのは、
Cクレモンズの音だったかもしれません。